ええ毛布は、ええ原料から。
紡績工場長・西出さんは力強く言った。

高級ファッションブランドに通用する。そう言われるほど、東京西川で扱うカシミヤは上質だ。
独自の検査、公的機関の検査を行い、品質を厳しく調べる。
「実際、現地に行ってチェックするところは、他にあんまりない」西出さんはそう語る。
「多くは、現地で毛糸にしたものを輸入する。うちは原毛で仕入れて、検査して、毛糸をつくる。そこがこだわり」。
一頭から150〜200gしか採れない原毛を、丈夫な糸にする。
カシミヤ毛布の赤ちゃんが、産声をあげている。

機械と、職人の目で織るんや。
製織(せいしょく)担当・楠さんが教えてくれた。

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糸を生地にしていく、それが製織だ。使用するのは、“レピア織機”。
タテ糸の間を左右からレピアという金具がヨコ糸とともに往復して織りあげる。
「往復毎分150回。高速やから目で追えませんよ(笑)」と、製織の楠さん。
レピア織機の上には“ジャカード機”という柄をつくる機械がある。
穴があいた紋紙(もんし)によって、タテ糸を操る。魔法のように模様が織りあげられていく。
織機のそばで、熟練の職人たちが厳しい目を光らせている。
そして、生地は、洗浄と染色がほどこされる。

コツ?…40年分の経験かなぁ。
起毛師・和田さんはつぶやいた。

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毛布の価値は、起毛で決まる。“起毛機”にかけられた生地は、
たくさんの針がついたローラーの上を何度も通り、繊維が一本一本引き出される。
ゴワゴワした手触りが、毛布らしい柔らかな手触りへ。
起毛に大切なものは?和田さんに尋ねると「ここや!」と笑いながら自分の腕をたたいた。
季節、天気、時間帯、機械の温度差。すべてを考えながら、
熟練の起毛師はローラーを調整する。データなんてない。試されるのは、長年の技とカン。
毛布が生まれる瞬間には、人の感性が生きている。

ほら。なめらかさが顔を出した。
仕上げ担当・水田さんが言った。

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いよいよ、仕上げへ。まずは、“シャーリング加工”。
「起毛した毛を立て、長さを揃えてカットするんです」。水田さんは言う。
「毛玉を防いで、色や柄を鮮やかに浮き立たせるんですわ」。
そして、“ポリッシャー加工”。毛の縮れに高圧のアイロンをかけて伸ばしていく。
表面に光沢を出すことで、毛布のなめらかさはここで生まれる。
職人の指先が、ひとつひとつの仕上がりを厳しく確かめている。

一枚一枚、私の目はフル稼働です。
検品員・濱口さんは微笑んだ。

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仕上げた生地は、縫製や裁断をほどこす。
すっかり見慣れた毛布の姿だ。しかし、まだ完成ではない。
静かな検品室。毛布を広げ、じっと見つめる女性がいる。検品員の濱口さんだ。
長い時間をかけて一枚。ピンセットで細かな毛羽を丁寧に取り除く。
「天然のものやから、どうしても小さな混ざりものがあるんです。同じカシミヤの毛なんやけど…
やっぱり、気になるからね」。東京西川の毛布は、人の目で完成する。